どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

山行における取り組みテーマについて(仮) 於 瑞牆山

誰かと山に登りに行く際のテーマは「楽しく登る」ことです。

ついひとりの時は登る距離やスピードに囚われ、忙しなく競技的な山登りをしてしまいます。途中休憩はほとんど取らず黙々と登り続け、後続の登山者に抜かれることなどなく、むしろ全員ごぼう抜きする勢いで登っていきます。山頂に到着しても登頂記録用の写真だけ撮りすぐに引き返し、頂上でお弁当や景色の良い場所でお茶をするなどということはしません。その結果、登山後には極度の疲労で決まって頭が痛くなる、膝が痛くなる、ひどい時には吐き気を催すこともあります。まったく、何をしに行っているのかわからなくなります。

ところが、一緒に登るパートナーがいれば状況は一転します。相手のペースに合わせておしゃべりしながらゆっくり登ることになり、後からやって来る登山者からはばんばん抜かれるどころか、後続の姿が見えた時点で立ち止まって早めに道を譲る、という人が変わったような行動も見せます。ラーメンも持参し景色の良い場所で食べます。これぞ、本来の山の楽しみ方というものです。

ということで「急がない・断食しない・(膝痛を)発症させない」を有言実行するべく、先日職場の先輩と山梨県にある瑞牆山に登ってきました。平日の早朝に電車に乗っていると出勤中のサラリーマンや学生が大半で、資格の参考書を読みながら勉強されている方、これから始まる一日に備え睡眠されている方など、さすが皆様通勤の時間も上手く活用されております。スマホのゲームをしながら「早く着かないかなー」などとボケーと過ごしている私との差は歴然です。こういうところが将来取り返しのつかない差になることは言うまでもございません。しかし、人と同じことをやりたがらないこの典型的な天邪鬼にはその重要性が微塵も伝わっておりません。そんなことを30過ぎても続けていれば、畢竟人生など上手くいくはずがございません。

八王子駅で山梨方面に向かう電車に乗り換えます。八王子寒いな。ここ八王子は学生時代に暮らしていた非常に思い入れのある場所です。目的地の韮崎駅までは2時間程かかる為、読書をしながら過ごします。今回、文庫本ではなくそれより大きな単行本サイズの本を持参しています。登山にそんなもの持っていくな、と怒られるかもしれませんが、本日は登山というより読書をする目的で来ていますので外すことはできません。また、単行本が多少大きくて重くてもテント泊の時のような恐ろしい荷物の重さに比べれば、日帰り登山など荷物が無いようなものなので全く問題ございません。

韮崎駅に到着後バスで登山口に向かいます。韮崎は何度か訪れたことがありますが、周囲を南アルプス八ヶ岳などに囲まれた素晴らしい景色を眺めることができる風光明媚な土地です。駅から少し離れたところには、富士山と一本桜のコラボレーションが圧巻な王仁塚の桜もあります。バスに乗車してから30分程経過した頃でしょうか、思いがけず、早くも今回の山行のクライマックスに遭遇しました。獅子吼城という場所から徐々に山の中に入って行き、増富温泉を経て登山口のある瑞牆山荘に至ります。それまでバスの中では俯きながら本を読んでいましたが、ふと顔を上げた瞬間、そこには桃源郷が広がっていました。そうです、今年一番の抜群に素晴らしい紅葉が目に入ってきました。まずは、見事に紅く染まった山が映える美しい里山の風景。そして、紅、黄、黄銅色と様々なコントラストの葉を纏った広葉樹林が、麗しい渓流を囲み朝日に照らされて黄金色に輝いていました。まさに息を呑むとはこのことで、立ち止まって写真を撮りたくなります。そして、もうここで降ろしてもらって散策したくなるほどでした。美しい紅葉の中での森林浴、秋山の醍醐味です。

瑞牆山荘で先輩と合流し、頭の中で本日のテーマについて再確認し登山を開始します。仕事や普段の生活に対しては不真面目そのものですが、登山に対しては真摯に取り組む私でございます。決して足の痛みを発症させない、また必要以上に疲労を蓄積させないよう登り下りで基本の姿勢を心がけ体幹を意識しながら歩を進めます。その後もおしゃべりしながら楽しく登り、山頂では登頂の健闘を讃え、景色を楽しみ、頂上でのラーメンタイムまで楽しみました。しかし、結局僕が帰りのバスの時間に間に合わない恐れがあるということで、バイクで来た先輩とは山頂で別れ、急いで下山することとなりました。猪も振り向くほどのスピードで山を駆け降り、記録1時間2分で無事バス乗り場まで到着しました。その代償として脚には過度のダメージ及び疲労が蓄積されたことは言うまでもございません。翌日筋肉痛になりました。今回掲げたテーマは何処へやら。

 

いやはや、物事というものは上手くいかないものです。

 

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