どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山①

みなさま、こんにちは。横浜駅構内で赤い液体が見つかり付近では一時的に厳戒態勢になったそうですが中身はいちごジャムだった、というニュースをテレビで見てこの国で生まれたことに感謝と喜びを感じております。

さて先日、栃木県と群馬県の間にある皇海山(すかいさん)に行ってきましたのでご報告いたします。この気高い名前を持つ日本百名山は、山頂までのアクセスが比較的容易なコースが立ち入り禁止となっている為(このコースの登山口に至る林道が廃止されたことによる)、現在メインとなっている庚申山を経由するルートが日帰り登山としては距離や技術的に少し難しくなっており、登山者を悩ませています。当初の予定ではテントを持参し1日目は皇海山、野宿、2日目に近くの袈裟丸山を登る予定でした。しかし、残念ながら2日目の天気が悪化し雨予報。その為、大人しく日帰りで皇海山のみ登ることにしました。

庚申山と鋸山を経由して皇海山に至るクラシックルートと呼ばれるこのコースは、奈良から平安時代に開山され江戸時代には信仰登山として利用されていたそうです。令和時代の現在では駐車場がある国民宿舎かじか荘を発着点とした場合でも往復12〜13時間かかります。加えて、治しては壊しを繰り返し歯医者通いから解放されないこの虫歯系クライマーの私は、わたらせ渓谷鉄道原向駅をスタート及びゴール地点としますのでコースタイム的に往復17〜18時間くらいでしょうか。朝家を出ると終電までに間に合わない為、前日の夕方に出発し夜から登る作戦にします。

家を出発し電車を乗り継ぎ群馬県桐生駅で以前から乗ってみたかった、わたらせ渓谷鉄道に乗り換えます。祖父万次郎が住んでいた関係で子供の頃桐生周辺にはよく来ていた為、覚えていないだけで実際乗ったことはあるのかもしれません。わたらせ渓谷鉄道は地域の住民の足にもなっていますが、基本的には足尾方面の観光列車としての色が強いものになります。

桐生駅での乗り換えの際に最初は気が付きませんでしたが、同じJRのホームに異彩を放つ1両編成の車両が止まっていました。味のある小豆色の外観とディーゼルエンジンの低音を響かせています。乗客は誰もいません。乗り方もよくわからないので恐る恐る車両に足を踏み入れます。ホームにある精算機でこれまでの運賃を支払い、乗車時に車両の中にある整理券を取り、降車時に車内で支払うバススタイルだということに気がつくまでになかなか時間を要しました。時刻は夜の9時過ぎ、この時間にあまり乗客はいないことは予想していましたが結局自分を含めて乗客5名で出発進行。桐生を後にしてからは徐々に山の中に入って行きます。外は暗闇で景色を眺めることが出来ません。スマホをいじったり、居眠りをしながらやり過ごします。仕事終わり後の3時間睡眠で来ているので割と眠いです。他の乗客の方は地元の方のようで途中ポツポツと降りていき、後半は謎の青年(恐らく20代)と僕の2名だけになりました。

道中線路内に鹿が飛び出すハプニングもありながらも22:33 原向駅到着。支払いの際にありがとうございますと愛想良く言ってくれた乗務員さんに「(俺、この真っ暗闇の中これから山に登りに)行ってきます」と言わんばかりのにっこりスマイルを返します。ところで、先ほどの青年は結局僕より先まで乗っていました。登山をするような格好はしておらず、この先降車駅に誰かが車で待っているのでしょうか。時間的に戻りの列車もないでしょうし、山の中なのでホテルや宿泊施設もないと思いますが、この後どうするのでしょうか、はたまた彼は神様か幽霊だったのでしょうか。

駅に到着してからは待合室でおにぎりをひとつ食べて準備を整え、22:46出発です。まずは、登山の起点となっている6km先の国民宿舎かじか壮を目指します。駅付近の渡良瀬川にかかる橋を渡り国道122号を日光方面へ向かいます。ふと見上げると、夜空には星が輝いています。こんなところからでもやっぱり山だと星がよく見えるなと感心します。ちなみに原向駅の標高は574mです。その後、800m先にある信号を左折し、そこからは道なりに山へ山へと進んでいくとかじか荘へ到着します。信号を左折してからは街灯もなくヘッドライトの明かりも心許ない感じがします。この時間では歩行者どころか車も全く通りかかりませんが、しばらくすると後方から車がやってきました。僕に近づくと減速しているのがわかったので振り返ると、ドライバーの男性が『乗って行きますか?』と声を掛けてくれました。しかし、まだ開始してから序盤ということや、もし乗せてもらってかじか荘まで連れて行ってもらえたとしても、結局かじか荘から先に進むのであまり早く進んでもその先で暗闇登山の時間が増えるだけなので今回はお断りすることにしました。これが疲労困憊の帰路だったら是非お願いしますと駅まで乗せてもらっていたと思います。あの時、声を掛けていただいたやさしそうな男性、ありがとうございます。無事家に帰って、お菓子食べながらこのブログ書いています。

久しぶりにドライバーから声を掛けてもらったので思い出したことがあります。もう5年以上前の話ですが、冬の山梨県山中湖付近を夜中歩いていた時に今回のようにミニバンが近づいてきて若い男性のドライバーから声を掛けられました。その時も最初は断っていましたが、寒いだろうから乗ってと何度も誘ってくるので最後はこちらが折れて乗せてもらうことにしました。車内では若い男性が6〜7人に囲まれて座っていたので、これは拉致かと思いました。が、そんなことは杞憂で彼らは成人式の為に地元に集った二十歳の新成人だそうで、ここの寒さを知っているからこんな夜に歩いていると心配したとか周辺の話とかしてくれて本当に良い青年たちでした。ドライバーから見ると夜に山の中を歩いていると心配になるのでしょう。申し訳ございません。

夜に星が見える山の中を歩いていると、空の天井が近いなと感じることがあります。場所によっては逆に作りものかと思ってしまうほど良く出来た星空があります。人工的に天井を設けてそこに星を散らしているイメージです。ちなみに僕はアラスカで宇宙一綺麗な星空、というか宇宙を感じられる星空を見たことがあります。あれは控えめに言っても世界一に入る星空だったと記憶しております。まあ〜アラスカに行っていた時のよもやま話もそのうち綴ろうかと思います。

道を歩いているとガードレール等に反射板があって僕がつけているヘッドライトの光に反射して光りますが、時々人工物がないと思われる場所で光っているものを見ます。そうです、鹿です。鹿の目が2つ光ります。鹿は夜行性です。所々に鹿が現れてこちらの様子を伺っています。道路沿いの庚申川がゴーゴーと音を立てて流れています。暗闇と相まって不気味さが増します。

00:07かじか荘に到着。かじか荘は温泉のある宿泊施設です。近くの銀山平公園ではキャンプ場もあります。現在皇海山を日帰り登山する場合ここまで車で来て登り始めるのが一般的となっています。

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さあて、ここからいよいよ登山の開始となります。いったい前歯はいつ欠けるのでしょうか。

つづく