どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山②

前回の内容はこちら【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山①

かじか荘から先を歩いていると今まで耳にしなかった音が聞こえたので、動物かなと思うと前方に拳くらいの石が落ちてきました。周囲には落石注意の看板がところどころにあります。少し土砂崩れのようなところもあります。危ない、危ない。その先には車両通行止めのゲートがありました。落石のためこの先車両通行止めと記載されています。先ほど石が転がって来たのを見ているだけあって恐怖を感じます。

しばらくするとそれまで舗装されていた道から林道に変わります。ここまでは傾斜も緩やかで険しい場所はありません。気をつけることは落石に注意するくらいです。そして林道の終点に到着すると突如現れた赤い鳥居。この一の鳥居と呼ばれる場所からいよいよ本格的に登山道の開始、山の中に入っていくという雰囲気です。深夜の暗闇の中に浮かぶ赤い鳥居はやや恐ろしい雰囲気を感じますが、無事に戻って来れるよう一礼してくぐります。次に目指すポイントは庚申山荘になります。一の鳥居から先は樹林帯になる為、暗さに拍車がかかります。山でお馴染みのピンクテープはありませんが、ルート上の木に反射板が設けられていて僕のヘッドライトの光に反射して方向を知らせてくれます。それまで聞こえていた川の音も徐々に消えていきます。川から離れて行っているようです。この暗さと静けさが3時間睡眠の僕の眠気を誘います。鳥居を通過して以降、道を見失うようになってきました。このような標高が上がりきらない樹林帯が一番道を見失います。どこにでも入っていけてしまうからです。間違っては見上げて木の反射板を探したりスマホGPSで方向を確認して修正します。庚申山荘までの間には鏡岩、夫婦蛙岩、仁王門と呼ばれる大きな岩があります。山によくある昔の逸話つき。

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ふと振り返ると樹林の隙間からは月が見え、妖艶なオレンジ色に輝いていました。

 

一の鳥居から1時間20分経過した頃でしょうか、02:17 庚申山荘に到着。ですが、これは後でGPSの結果から判明したことであり、実施は暗くて山荘がどこにあるのかわからず通過していました。何度か迷子になっていたこともありコースタイムより時間がかかっていたようです。山荘から30分程先に進んだ場所では少し開けた場所があり、遠くには街の光が見え標高が上がって来たことを感じられます。

その先では徐々に道幅が狭くなり場所によっては梯子があったり岩を攀じ登るような場所も出てきます。そして先ほどまで以上に道を見失うようになってしまいました。GPSで正しい方角を向いてもそちらにはルートらしきものが見えず、どこだろうと首を傾げます。ここかしこを彷徨います。そうこうしている内に大きな岩の間の急斜面に入り込んでしまいました。登れなくもないかと足を踏み入れましたが、ふと冷静に考えるとさすがにこれが正規のルートじゃないよなと思い、首をぐいっと真上を見上げると鉄製の梯子の側面のようなものが見えました。あそこが正しいルートかと思う一方でどうやってあそこまで行くのだろうかと悩みます。このまま垂直に直登はさすがに無理そう。左側から登っていくのも真上よりは行けそうだけれども、その先につながっているのか不明。一旦戻って右回りに行くにしてもその道は見当たりません。考えた末に引き返すことにしました。しかし、引き返すにも斜面がザレていて滑って気を抜くとそのまま下まで落ちてしまいそうです。断崖絶壁ではないので落ちたら死ぬとかはなさそうですが、掴めるところがないので滑ったらそのままけっこう下まで落ちてしまいそうです。嫌な予感がするなと振り返って下ろうとした直後、ズズズッ。「あ、危ねえ」。少し滑りましたが、何とか踏み留まりました。しかーし、その時の勢いでザックの脇に入れていたお茶のペットボトルが落ちてしまいました。あああ、貴重な水分が。今回は500mlのお茶と水ひとつのみ持って来ているので早くも半分失いました。落下したお茶は見える範囲にはあったので取りに行こうか悩みましたが、そのまま斜面を滑って下まで落ちてしまう危険性があったので諦めました。いや、水が足りるか不安だな。真夏ではないからまだ大丈夫だけどまだまだ序盤だぞ。そして、この間の格闘で指が血だらけになりました。

その後は何とか無事に正規のルートに戻り、03:28少し開けた景色が見える場所があったため休憩を取ることにします。まだ庚申山頂上にはたどり着きません。結構遠いなー。暗いから進むの遅いし疲れるなー。少し寝てもいいかなーと気が緩みウィダーインゼリーを飲もうと飲み口を咥えた瞬間、「バキッッツ」。不快な音が静寂に包まれる未明の山中に響きました。瞬時に状況の理解をしたと同時に「またか」とため息が漏れます。はい、前歯が欠けました。数年前にも全く同じくウィダーインゼリーを飲もうとした際に前歯で噛んで欠けたことがあります。歴史は繰り返すとはこのことでしょうか。発端は虫歯で前歯が少し欠ける→詰める→出勤中のウィダーインゼリーで更に大きく欠ける→詰める→登山中のウィダーインゼリーでまた欠ける(※今ここ)。登山中に転んだりぶつけたりして登山者としての勲章のように歯が欠けるならまだしも、休憩中のウィダーインゼリーで歯が欠けるとはいったいどういうことでしょうか。ゼリー自体は柔らかいのにそれを飲もうとして歯が欠けるとは皮肉なものです。本当にどうしようもありません。しかも、絵に描いたような欠け方で左の前歯の中心よりのところが綺麗に正方形に欠けています。歯が欠けているおじさんを想像していただければまさにその通りです。はあ、もうどうでも良くなりました。ということで不貞寝することにします。04:30まで1時間寝ることにします。その頃には日も出てくるでしょう。何ならもっと寝ても良いです。今回時間はたっぷりあります。愛用のモンベルのダウンジャケット(愛用し過ぎて綿が抜けてきている)を羽織り、マットも何もない地面の上に横たわります。こんな所で寝ていたら万が一、人が通りかかったらたまげるでしょうがそんなの関係ありません。さすが愛用のダウンジャケット、アラスカでも酷使していただけあって暖かいです。ぐっすり眠れそうです。それでは、おやすみなさい。

つづく