どこまでも歩いていく

歩きながら考える。主に山登りとか。

【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山③

前回の前歯が欠けた悲劇はこちら【悲報】登山中に前歯が欠けた話 於皇海山②

「寒っ」、目が覚めたのはわずか15分後でした。愛用のダウンジャケットに身を包んでいましたが初夏とは言えやっぱり山の朝は寒い。山の地面にダイレクトで寝ていましたし標高も1900mくらいまで上がっていて、風が吹けばなおさら肌寒さを感じます。ということで、03:45出発することにします。

すると、15分ほどで庚申山山頂到着。

f:id:takayuuuuu:20230520183959j:image庚申山から先は尾根沿いにいくつかのピークを経て皇海山に至ります。

時刻は4時を過ぎて東の空が茜色に染まります。グッドモーニングジャパン。
f:id:takayuuuuu:20230520184007j:image一度日が出てくると急激に明るくなってきます。今まで暗くて動きにくかったですが、明るくなればこちらのものです。

途中分かりにくい藪漕ぎや急登もありましたが駒掛山、渓雲山と順調にピークを経由し、

05:08薬師岳に到着。f:id:takayuuuuu:20230520184041j:image薬師岳の先では目指す皇海山山頂がよく見えます。うん、でもまだあんなにあるんだね。
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薬師岳から鋸山の間は険しい難所が出現します。岩を攀じ登ったり降りたりが好きな人にとっては楽しめる箇所だと思います。妙義山剱岳など過去に登っていますが基本的にビビりの僕には涙ものです。早朝からの懸垂下降状態に、もう怖くて無理ー、いっそのこともうここで諦めちゃおうかなー、今引き返せばそんなに大変じゃないなーと甘えた言い草しか出てきません。これ暗かったら無理だったな、いや、暗い方が周りが見えないから逆に怖くなかったのかな。ビビり過ぎてめちゃくちゃ時間がかかりました。そして、無駄に力み過ぎて太もも両方痙攣しました。

06:05 恐怖畏怖葛藤痙攣を乗り越えて鋸山に到着。初めて自分で自分を褒めたいと思います。
f:id:takayuuuuu:20230520184003j:imageしかし、皇海山方面に向かう鋸山山頂直下もロープでの下りのおまけつき。もうやめてー。

薬師岳から鋸山の間の難所に完全にイップス状態になった僕は正直これ戻るの面倒くさいなと敗北モードで地図を眺めていると、鋸山から薬師岳ではなく別方向に下りて行き庚申山山荘まで戻るルートを発見。しかも地図を見る限りあまり険しくなさそう。神からの天啓、欠けた前歯をむき出しにしてニヤリと笑います。夜から登っている疲労、前歯を一部失っていること、太ももの痙攣、その他自分のコンディションを勘案してそちらのルートで戻ることを即断しました。臨機応変に対処することは非常に大切です。

その後は一旦やや高度を下げて不動沢ルートとの合流地点に向かいます。現在廃止されている林道から登ってきた場合に合流するところです。ここから登り下りできたら距離も短いし危険箇所もなさそうなので気軽に日帰り出来ますね。  

07:22 ふと気になって、iPhoneで自撮りをして欠けた前歯の状況を確認したところ、自分の化け物のような形相にぞっとします。気を落としていても歯は生えてこないので最後の登りに挑みます。  

07:42 皇海山山頂到着。山頂から景色見えないのかーい。
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ともあれ、山頂まで無事辿り着いたので持参したミニコーラで乾杯。朝早いこともあり誰もまだいません。休憩していると寒くなってきたため滞在時間15分弱で下山開始。

帰路、不動沢ルートの分岐付近で今回の山行で初めて他の登山者に遭遇。ヘルメットを着用されたダンディなおじさま。僕と同じく天啓ルートで戻るようなのでスマホの地図でこっちですよと懇切丁寧、和顔愛語で接していますが、内心前歯が欠けていることを悟られていないか心配しています。

その後、鋸山まで戻ると山頂では8人くらいの中高年のグループがいました。こちらも前歯が一部ないことに気づかれぬよう軽く挨拶するだけで去ります。彼らも半分くらいはヘルメット着用でした。ハーネスつけている人もいました。割と頷けます。鋸山からは方向を変えて下山します。

さてこちらは今回の山行で一番良かった、鋸山直下の六林班方面に下りていく際の風景。

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山から見る景色はきっと遥か昔から変わっていないのだろと思いをめぐらすことがあります。もちろん山の中でも登山道や山荘がつくられたり細かい部分は変化しますが、山から見ることが出来る自然の形は地形が完成された太古の昔からそう変わらないので、きっと千年前や数百年前の人と同じ景色を見ていることでしょう。

そんな浪漫に浸った後は、胸の高さまである藪漕ぎです。やはり山は飴と鞭です。というか鞭の方が圧倒的に多い気がします。
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六輪班峠からは長い長いトラバースロードが続きます。このトラバース区間は道幅が狭く、滑りやすかったり片側が急斜面になっていて落ちないようにとなかなか気が抜けません。そして、この頃には体力の低下を著しく感じ、歩けども歩けども距離が縮まりません。唯一の救いはこちらのルートには所々に川があり水分を補給出来ることです。欠けている歯を食いしばりながら進むこと約2時間、庚申山山荘手前の天下の見晴との分岐に到着。せっかくなのでということで体力を振り絞って見に行くことにしましたがうーん、イマイチ。その後はもう足の靭帯が切れそうで、まだかまだかと鼻息荒く進みます。

12:21 庚申山山荘に戻って来ました。
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ここからはもう危険箇所はないからひと安心です。一の鳥居方面から来た場合、正面にあったんですね、暗くて気がつきませんでした。

昼間の一の鳥居。無事に戻って来れた感謝を脱帽の上、深々と一礼。新緑に朱色が映えます。
f:id:takayuuuuu:20230520184018j:image13:55温泉のあるかじか荘へ到着。足がもう動かないのでひと風呂浴びます。
f:id:takayuuuuu:20230520184037j:image温泉は天才です。30分ほどの入浴でしたが足がかなり回復。また歩けるようになりました。

かじか荘から駅までの道のりでは下手したら襲われてしまうのではないかと不安になるほど猿がたくさんいましたが、みなさん僕が通りかかる前に逃げて道を開けてくれるので手を上げて謝意を表します。

16:16 ゴール地点である原向駅到着。いやあ、長かった。GPSを確認すると最終的に38.9kmでした。帰宅後3〜4日間は足の筋肉痛が続いていました。今回の山行は距離や難度において申し分なく、全体的に新緑や高山植物が咲いていてきれいで楽しめました。北側の沢入山を経由するルートや松木川方面、袈裟丸山等気になる場所が他にもありますのでこのエリアにはまた来たいと思います。楽しみにしていたわたらせ渓谷鉄道では行きは夜間のため景色が見えず、帰りは爆睡でこれまた見れず。

おわり